反省はしている。

妄想・性癖・思い込みを色濃く含んだ不甲斐無い創作物集です。
充実した無駄な時間を過ごしたい時に。

youtubeで楽曲挙げたりFacebookやってたりなんかもします。
各サイトで『キジマタク』を検索頂ければニョロっと出てくるようです。

昔の仕事。

おや?私の以前の仕事に興味がおありですか?


……大きな声じゃ言えませんがね、ワタクシ、実は特撮モノのヒーローをやっていたのですよ。

ほら、あなたもきっと良くご存知のアレですよ。

ウルトラマン?……残念っ!

ゴレンジャー?……惜しいっ!

判りませんか?…じゃあ特別にヒントですよ。
まずは仮面をかぶってます!
そして……いや、これ言っちゃったらバレちゃうかな……

いや、もう今日は特別ですよ、特別の大ヒントっ!

ジャジャーーン

変身ベルトを着けてます。ほら、もう判っちゃった。

…え?仮面ライダー?

……惜しいっ!実に惜しいっ!!さて、仮面ライダーじゃなきゃもうコレしか無いでしょ!ほら、もうわかっちゃいましたね?その表情は。
ではこの際私と一緒にせえので発表しちゃいましょう!……行きますよ?

せえの、
『モヘンジョダロマン』


…………え?
まさか、ご存知無い??
モヘンジョダロマンですよ?あのモヘンジョダロマン??

まったまたぁ、シッカリして下さいよ、あの有名なモヘンジョキーック!!モヘンジョチョーップ!!そして必殺モヘンジョ重水素核融合!!!………って、

……本当に知らないのですか??

……いえ、あの、仮面ライダーじゃありませんよ?バイクとか乗らないし。

……いえ、あの、ウルトラマンでも無いですよ?デッカくならないし。


……ちょ、ちょっと待って!話の途中で帰らないて下さいよ!これが面白い処への伏線なんですって!
きっとあなたもモヘンジョダロマンの虜になりますよ?


……え?何だか途方も無く、弱そう??


いやいや、実はモヘンジョダロマンは特撮ヒーロー史上ダントツで最強の必殺技を持って居るのですよ。

必殺モヘンジョ重水素核融合。


それを使った瞬間モヘンジョダロマンを中心にこの地球上全てのありとあらゆる物が跡形も無く粉微塵に!!


………その甚大な破壊力ゆえに心優しきモヘンジョダロマンは必殺技を使う事無く何時も宿敵チグリス・ユーフラテス星人にタコ殴り………
って、あれ?
まだ話は終わってませんよ?ちょっと!!

カマボコ板

ワタクシ、幼少の頃よりどうしても好きで好きでたまらぬモノがあるのですよ。
皆様、カマボコはお好きですか??


ワタクシは……カマボコ板が……大好きなのです。
ワタクシは……カマボコ板を……愛して居るのです!!


そう、表札に使って良しっ!壁に並べ貼りつけアートを名乗って良しっ!……面子として使えば連戦連勝、そんじょそこらの画用紙とは格が違うのです!!
……中でもワタクシのお薦めは、そう、こんな板張りの床…そう、コチラにカマボコ板をそっと落としてみて下さい。


………カランカラン。


……素敵な音色です。
喧騒とした日常から一線を画した哀愁と余韻。
その中に確かな力強さと包容力を兼ね揃えた、何処かノスタルジックな懐かしさをも携えたこの音色。


……彼女だけなんです。ワタクシにとって。


ワタクシには夢があります。カマボコ板と言う名の彼女達を集めて大きな船を作ろう……大海原へ漕ぎだし、太平洋のど真ん中で、思う存分、


カランカラン、カランカラン


と、彼女達の甘美な音色を打ち鳴らそう。


私は走った、近所のスーパーへ。


『カマボコ、全部下さい』


…レジのお姉さんの目は笑って無かった!近所のおばちゃんの目はむしろ怒ってた!!
私は振り向かなかった、全ては彼女と大海原の為だと思うと……不思議と勇気が湧いてきたのです。


……そこからが、本当の闘いでした。


彼女の上に図々しくも乗っかってるカマボコを全て引き剥がし、欠片も残さず食さねばならぬ!
……私は食べた……来る日も来る日も、朝・昼・晩、雨の日も、風の日も、プッチンプリンのCMの誘惑にも負けず!
……何時しか私はカマボコを噛む事すら不愉快に思え、奴等を丸呑みにしてやった。


……苦しかった。


苦しさの余り夜の街へ飛び出し罪の無い人達を傷付けた。
好きでも無い女と一夜を共にした事もあった。
でも……誰もカマボコ板の変わりにはならなかった、カマボコ板と私のココロの隙間を埋めるモノは何処にも存在しなかった!!


……何時しか、私の体のホトンドは原料のスケソウダラで一杯になっていた。
私には…もう一つの夢があったのです。
『産まれ変わったら、マンボウになろう』…と。
しかし、今の私はそのホトンドが私の憎むべきスケソウダラ!!


……私の信念を継ぐ者達へ。


夢は輪廻、
私はきっともうじきあなたの憎むべきスケソウダラとなってあなたの愛すべきカマボコ板の前に立ちはだかる事でしょう。


……大丈夫。


あなたの哀しみはワタクシが全て引き受けましょう。
ただ、こんな私からあなたに一つ、せめてものお願いがあるのです。


……私の背中に、ワサビを塗らないで欲しい。
それが……夢敗れ、恋敗れたあなたの意志を先駆けた一人の悲しい男からの……最後のお願いです。

強くなりすぎた・・・

・・・おかしい。
どう考えても釈然としない。

今までは魔王を倒す為がむしゃらだった。
そして幾多における苦難の末、遂に魔王を超える身体能力を手に入れたんだ。
これ、凄い事なのよ。ホントに大変なんだから。
解る?一行で言っちゃったケド、ホント死ぬかもって位大変なんだからね。

思えば王様に呼ばれた宴から明らかに何かが違って居たんだ。


いや、確かに俺も悪い事したなとは思ってるよ。
ついつい全力でクシャミぶちかまして宮殿大広間半壊させちゃったからね。
だけど言うなればあれは唯の生理現象、不可抗力で起こった事故じゃないか。


いやね、確かにちょっとだけだよ、ほんのちょっとだけ。
風圧でぶっ飛んだ柱に真っ青になってる王様見て『このおっさんに全力でデコピンしたら何十メートル位吹っ飛ぶかなぁ』とか考えてた事は否定しないよ。
だけど考えるだけだよ!言葉にもしてないよ!むしろふっと過ったお茶目心だよ!
俺もそこんとこは良識ある大人だしそもそも魔王から世界を救った勇者だしね。


それよりも王様から褒美に貰ったこのお城。


・・・おかしいでしょ?

いや、間取りとか拡さとかは問題無いよ。お城の外観も超カッコいいし。
自然豊かな森に面したバルコニーで小鳥の囀り聴きながら年代物ワインくいっとやってる時なんかはサイコーだよ。

だけど最寄のコンビニまで車で二週間ってどういう事?

どれだけ田舎なのよ!てか俺以外住んでる人間見た事無いよ!少なくとも城周辺三百キロ圏内では。

どうするのよ!醤油でも切らしたらお隣さんへ向かうまでかなり冒険の旅だよ。
むしろ此処に越してきてから人と話した事はおろか出会った事も無いよ!
だだっ広いお城の掃除とか一人じゃ大変だから最近じゃ魔王居なくなって仕事に困ってた魔物の皆さんに働いて貰っているよ。


いや、彼等に不満は無いんだけどね。


低賃金で良く働いてくれるし料理も上手だし話し相手にもなってくれるし最近じゃ趣味の晩酌にも付き合ってくれるんだけど、問題はそこじゃないのよ!


おかしくない?

俺、魔王倒した勇者だよね?

村人とかに手振られたりサインねだられたりギャル達の黄色い声にキャーキャー迎えられたりそんなオプション付いてないの?

同じ仲間でも魔法使いとか僧侶とかモテモテで良い暮らししてるみたいだよね。

僧侶は病院立ち上げて『奇跡の名医』とか言われて崇められてるみたいだし魔法使いに至ってはプリンセスなんとかって芸名名乗って占い師で大儲け、最近じゃ売れっ子グラビアアイドルとしても雑誌にテレビに大忙しだもんね。


あー良いな、みんな良いな。


俺もモテモテでキャーキャー言われたいよ。

あ、そう言えば戦士の奴はどうなったんだ?
確か宴の後、王宮の部隊長に任命されたんだよな。
アイツ俺より筋肉ダルマだしな・・・苦労してんだろうな。
宴のドサクサ以降会ってないしカタブツで面倒臭い野郎だけど久々に電話してやるか。


『お掛けになった電話は、現在使われておりません』


戦士・・・おまえもか。

最近携帯替えてもみんな俺だけには教えてくれないんだよね。
僧侶なんか魔王決戦前日に魔法使いとデキてたし。

狭い宿屋の隣でギシギシギシギシあーもうこちとら唯でさえ気が張ってんのに眠れやしない。
なにが『俺の回復魔法で何ラウンドでも回復しちゃうぞー』だよ。あー思い出したら腹が立ってきた。


結局俺と繋がってる人間はたまにメールをくれる王都のキャバクラのマリンちゃんだけか。
マリンちゃんのお店にももう随分と行ってないな。


・・・そうだ!

このお城にマリンちゃん達を招待すれば良いではないか!
ひらめいちゃった俺、超名案!俺、策士!
そうと決まったらお城の飾り付けしなきゃ。
キラキラのモールとか折り紙の輪っかとかごちゃごちゃしたアレとかいっぱい柱にくっ付けなきゃ。
そうだ!テーブルクロスはマリンちゃんの大好きなピンクのハート柄にしよう!

よし!今日はバイト料も奮発しちゃうぞ!
魔物のみなさーん!
この招待状を王都のキャバクラ、スケスケパラダイスまでお届けしてちょ。



・・・その夜だった。
王都で魔王討伐隊が結成されたのは。